本屋の小説コーナーに行けばイヤでも目にするこの名前は、全く小説に関わりのない方でも聞いたことくらいはあるでしょう。
『ガリレオ』『流星の絆』『白夜行』『レイクサイド マーダーケース』。ここ数年で映像化されたこれらの作品の原作者であります。
昨年の今くらいの時期に月九で放送されていた『ガリレオ』がけっこう好き。とは既に言ってたと思いますが、その原作となった『探偵ガリレオ』『予知夢』『容疑者Xの献身』が立ち寄った本屋にまとめて平積みされていたのを見付けて、それら3冊全てをレジに持って行ってしまいました。そんな運びです。
映画化された『容疑者Xの献身』以外の他2冊は短編集で、1つ1つの話はダラダラ読み進めても数十分で終える長さのお話です。
とは言っても、現時点ではシリーズ第一弾に当たる『探偵ガリレオ』しか読んでないんですが、あらすじや目次を見る限りそうみたい。
事件に使われたトリックを除き、登場人物の設定やストーリーはドラマとはだいぶ異なります。
解り易い違いは、ドラマでは主人公・湯川の相棒&刑事役は柴咲コウ、じゃなくて内海薫でしたが、原作は草薙俊平という男が務めています。ちなみにドラマでも草薙は登場し、湯川のお陰で本庁に栄転して、内海に湯川を紹介したという設定でした。
原作執筆時はちょっと昔らしく「助教授」や「ポケベル」なんてワードもありますね。
湯川の性格もやや原作とドラマでは相違が見られます。
ドラマでは不可解なトリックにのみ執着し、事件そのものにも加害者にも被害者にもさほど興味を示していない風でしたが、原作ではもう少し突っ込んで、厄介事を持ち込む相棒にもドラマ版湯川に比べるとずっと協力的な印象があります。
この違いは好き好きって気がするなぁ。ドラマが必ずしも改悪とは思いません。相棒が男か女かという違いが大きいかな。
それより、男女の愛情か、男同士の友情かって言えば、好き嫌いはもっとはっきりするかも。
ドラマ版湯川の所構わず長々とした数式を書きまくる場面などは、如何にも変人科学者を演出した感があり過ぎて、あまり好きじゃなかったけど、やっぱり原作にはありませんでした。研究室の愉快な研究員たちもドラマのオリジナルの模様。
相棒を女への変更を含めて、これらは月九ドラマらしくしたようですね。
先にドラマを見てしまったので、先入観からドラマの肩を持たざるを得ないのは情けないですが、ただ1点、原作・ドラマ共に最初の話に持ってきた『燃える』という話の中で、原作では「ちょっと脅かすつもりがまさか殺しちゃうなんて…」で終わっていますが、ドラマでは同じように主張する被疑者に対して、何度も何度も失敗しながら実験・検証を重ね、自分の推理が正しいことを証明すると同時に、犯人もこのやり方を選んだ以上、同じだけ失敗を繰り返して練習し、実行に移したはずであると、たまたま偶然運の悪いことに殺してしまった可能性が極めて低いことを推察するシーンは、ちょっと原作でも欲しかったなと思うくらい印象深いです。
この部分だけは自信を持って原作を上回ったかな、と言える改善だと個人的には思います。
まぁ先入観を差し引いても、最終話以外はよくできた内容だったと思うので、ドラマはドラマとして成功したと言えるんじゃないでしょうか。
事件ものってだけで評価が甘くなることは否定しませんけど。
あまり人のことどうこう言えるとは決して思っていませんが、東野さんは「~違いない」という言い回しがやたら多いのが気になるなぁ。
他の本ではそうでもないことを願いたいけど、この出現率からして東野さんの癖みたいなものと思える。